Q&A
【工法概要編】
- 1. OSリングを使用するメリットは?
- 2. OSリングの構造性能は?
- 3. SタイプとLタイプの違いは?
- 4. SSタイプとは?
- 5. 製品重量は?
- 6. 両面補強のメリットは?
- 7. 形状A・形状B・形状Cの違いは?
- 8. 形状Aの外周は何故窪みがあるのか?
- 9. OSリングの製造方法及び鋼種は?
- 10. ローリング鍛造加工をした場合に材料変質はしないのか?
- 11. 貫通孔径は梁せいの2/3倍なのに梁サイズによって適用できない場合があるが?
- 12. 貫通孔径をOSリング内径より小さくする事は可能か?
- 13. 梁フランジ内面からOSリング外縁までのあきは最小24mmだが、柱面や継手からOSリング外縁までのあきが70mm以上なのは何故か?
- 14. カタログ・標準図・評定書等を入手したい場合はどうすれば良いのか?
【設 計 編】
- 15. 全強設計か?
- 16. 構造性能における在来工法との違いは?
- 17. 在来工法や他社評定品からOSリングに変更する場合は?
- 18. カタログや標準図の適用範囲を守れば、どこにでも取り付けられるのか?
- 19. 検討はどのように行えばよいのか?
- 20. 検討書の設置可能範囲を満足すれば採用できるのか?
- 21. 検討を依頼するために必要な資料とは?
- 22. 構造計算書の終局時の応力図を用いた検討を行う場合はDs算定時と保有水平耐力算定時のどちらの応力を用いるのか?
- 23. 確認申請時に必要な資料は?
- 24. 梁に軸力が作用する場合は適用可能か?
- 25. 梁に軸力が作用する場合でも梁端部に貫通孔を設けることが可能か?
- 26. 初期剛性は無孔梁と変わらないのか?
- 27. 一つの梁に対し、何個まで貫通孔を設けて良いのか?
- 28. SN400Aや梁の部材種別がFC及びFDの場合に「塑性化部」に適用不可とあるが、「塑性化部」の定義は?
- 29. 梁の鋼種がSN400Aの場合、「塑性化部」に対して適用不可の理由は?
- 30. 梁の部材種別がFC及びFDの場合、「塑性化部」に対して適用不可の理由は?
- 31. ウェブ貫通孔径をOSリング内径まで拡げることは可能か?
- 32. SSタイプを大梁に適用できない理由は?
- 33. 梁幅/梁せい比を設けている理由は?
- 34. 軸力が作用しない場合、ウェブ幅厚比が96以下の根拠は?
- 35. SSタイプにのみ適用スパン比が設けられている理由は?
- 36. 軸力が作用し、かつ、塑性化が予想される領域に貫通孔を設ける場合、適用スパン比が設けられている理由は?
- 37. 梁せい方向に連続孔を設けることが可能か?
- 38. SRC構造梁の貫通孔補強工法に用いたいが?
【施 工 編】
- 39. 何故、すみ肉溶接サイズが規定されているのか?
- 40. OSリングの上面の刻印の意味は?
- 41. OSリングの側面のラインは?
- 42. 梁フランジ近くに溶接する場合の注意点は?
- 43. 鋼管切断仕様において内周面に添付されたシールが剥がれ落ちている場合の溶接面の確認方法は?
- 44. 防錆剤は剥がさないといけないのか?
- 45. OSリング溶接施工マニュアルに記載されているタセトシルバーの除去方法は?
- 46. 間違って溶接した場合、はつり取れば再使用できるのか?
- 47. 片側溶接により、溶接歪みが発生しやすいのでは?
- 48. 連続孔の場合、同じ方向から取り付けても問題はないのか?
- 49. 現場でも取り付け可能か?
- 50. OSリング(形状C)の内径がカタログ値より小さい理由は?
- 51. 内周を溶接しないので見た目が悪い。内周を溶接しても問題はないか?
- 52. 貫通孔部分が面外に変形していて、OSリングと梁ウェブの隙間が2mmを超えている。梁ウェブの上にOSリングを載置し、OSリングを叩く事で梁ウェブの歪みを取っても良いか?
- 53. 耐火被覆は内側もやるのか?また、耐火被覆の手順はあるのか?
- 54. 溶融亜鉛メッキを施す場合の注意点は?
【工法概要編】
①プレート補強による在来工法と比較して、トータルコストの削減が可能です。
・外周のみのすみ肉溶接のため施工が簡便で、かつ、溶接量が少なくなります。
・片面補強の場合は、さらに梁の反転が不要となります。
→溶接時間減少に伴い、材料費・労務費も下がるため、トータルコストの削減ができます。
②貫通孔部分に作用する存在応力がOSリングを取り付けたH形鋼の耐力を上回らない事を確認する事で、梁の端部に貫通孔を設ける事が出来ます。
弊社総合実験センターにおいて、各種実大実験・部分実験およびFEM解析を行い、OSリングの構造性能(耐力・初期剛性・塑性変形性能)を確認し、一般財団法人日本建築センターの一般評定(BCJ評定-ST0135-13)を取得しています。
LタイプはSタイプの3倍程度重く、Sタイプと比較し貫通孔に対する補強効果が大きくなります。通常はSタイプで補強しますが、梁端部等大きな曲げモーメントが発生する箇所やスパンが短く大きなせん断力が発生する箇所等にはLタイプを適用します。ただし、Lタイプは対応貫通孔径が450mmまでとなります。
SSタイプはSタイプの1/2倍程度軽く、Sタイプと比較し貫通孔に対する補強効果が小さいです。孔径比(孔径/梁せい)が大きくなり、かつ、せん断力が大きくなると、せん断剛性低下が懸念されます。よって、大梁には適用できません。また、孔径比およびスパンの組み合わせに応じて、適用せん断スパン比を規定しています。ただし、SSタイプは対応貫通孔径が350mmまでとなります。なお、軸力が作用する梁で、かつ、塑性化が予想される領域には適用できません。
下表に示します。OSリングの重量は500S及び300Lが20kg超、600S及び350Lが30kg超、400Lは約50kg、450Lは約60kgと重量物となるため、移動の際はクレーンを用いる等、取扱には十分に注意してください。また、寸法許容差により実際の重量は表の数値と異なる可能性もあります。表の数値は目安としてお使いください。単位質量の基準値は7.85(g/㎤)で算定しています。
単位:kg
品名 | 100SS | 125SS | 150SS | 175SS | 200SS | 250SS | 300SS | 350SS |
重量 | 0.3 | 0.6 | 0.8 | 1.1 | 1.4 | 2.5 | 3.6 | 5.0 |
品名 | 100S | 125S | 150S | 175S | 200S | 250S | 300S | 350S | 400S | 450S | 500S | 600S |
重量 | 0.6 | 1.0 | 1.4 | 2.0 | 2.6 | 4.4 | 6.3 | 9.0 | 13 | 18 | 22 | 33 |
品名 | 100L | 125L | 150L | 175L | 200L | 250L | 300L | 350L | 400L | 450L |
重量 | 1.8 | 3.1 | 4.6 | 6.6 | 8.5 | 14 | 23 | 32 | 47 | 61 |
形状A・形状Bはローリング鍛造加工により製造します。建築基準法第37条第二号に基づく国土交通大臣認定を取得(認定番号 MSTL-0558,MSTL-0561,MSTL-0601)しています。形状Cは建築構造用炭素鋼管STKN490B(JIS G 3475)で製造します。または、建築構造用圧延鋼材SN490B(JIS G 3136)を切断加工することでも製造可能です。
ローリング鍛造は、約1,200°Cに赤めて鍛造した後、空気中で放冷し「焼きならし(焼準)」を行います。焼きならしをすることで、鋼を標準状態に戻し、加工による内部のひずみを取り除き、組織を微細化・均質化し、伸び・衝撃値などが向上します。また、硬さを下げる「焼きなまし(焼鈍)」、硬さを上げる「焼き入れ」とは異なり、硬さの変動はほとんどなく、降伏点・引張強さもほとんど変わりません。化学成分もSNR490Bと変わらないので溶接性が低下する事もありません。加工後の機械的性質、化学成分、その他品質が加工前と比べて同等以上となる事を確認し、建築基準法第37条第二号に基づく国土交通大臣認定を取得しています。
OSリングは外周のすみ肉溶接で梁ウェブとの応力伝達を図ります。大きな曲げモーメントが作用する梁端部においては、確実に溶接が行えるように、また、必要すみ肉溶接サイズの確認が行えるように、溶接ゲージで外観検査が行えるあき(70mm以上)を規定しています。
【設 計 編】
OSリングは、梁端部においても無孔梁と同等の構造性能(初期剛性・耐力・塑性変形能力)を確保する工法です。在来工法(プレート補強)のプレート形状によってはOSリングを上回る耐力を有する場合も有ります。しかし、塑性ヒンジ部での設置を考えた場合、無孔梁の構造性能よりも強くなり過ぎ、梁崩壊を想定して設計していたのにも関わらず、柱崩壊に繋がる事が懸念されます。適切に補強する事が必要と考えます。
無検討で変更する事は出来ません。貫通孔部分の存在応力(曲げモーメント・せん断力)がOSリングを取り付けたH形鋼の耐力を上回らない事を確認する必要があります。図面等によるご指示を戴くことで、技術スタッフが検討書を作成する技術サービスを行っています。
貫通孔部分の存在応力(曲げモーメント・せん断力)がOSリングを取り付けたH形鋼の耐力を上回らない事を確認する必要があります。図面等によるご指示を戴くことで、技術スタッフが検討書を作成する技術サービス行っています。
検討書はある仮定条件により検討します。必ず、構造設計者様がその仮定条件を確認・了承した上でOSリングのご採用をご決定くださいますようお願い致します。また、カタログ等に記載する適用範囲(納まり等)を遵守願います。
貫通孔位置及び径・梁サイズ・梁鋼種・梁スパン等が分かる構造図【伏図・スリーブ図・柱梁の断面リスト等】が必要です。原則、スリーブ図はCADデータでお願い致します。画像データやFAXの場合は値が読み取れるようにして送付してください。なお、構造計算書の応力図【鉛直荷重時・地震時・終局時(もしくはメカニズム時)】を戴ければ、詳細な検討を行う事が出来ますが、時間を有する事を予めご了承願います。
塑性化が予想される領域(材端からL/10又は2d以上までの部分程度。ここで、L:梁の長さ、d:梁せい)においても適用軸力比(N/Ny≦0.25 N:梁に作用する軸力、Ny:無孔梁の降伏軸力)など適用範囲を遵守すれば適用可能です。ただし、幅厚比や補強タイプに応じた適用スパン制限などの適用範囲を遵守する必要が有ります。
2020年版建築物の構造関係技術基準解説書などに見られる部材の塑性化が想定される領域(材端からL/10又は2d以上までの部分程度。ここで、L:梁の長さ、d:梁せい)ではなく、長期荷重の影響が大きい場合の梁中間部やハンチ始端部など、梁が全塑性モーメントに至り塑性化する部分と考えます。具体的には貫通孔部分の終局時存在応力がOSリングを取り付けたH形鋼の短期許容耐力に包含される範囲を適用可能範囲と考えます。
SN400Aは炭素当量または溶接割れ感受性組成が規定されていません。また、降伏後の変形性能が保証された鋼材ではありません。よって、塑性化しない部分のみと限定しています。 弾性範囲であれば溶接部に作用する応力も小さく使用可能と考えます。
可能です。ただし、当社での標準的な検討は「標準貫通孔径」で検討しています。
OSリング内径まで拡げると耐力算定及び連続孔間隔と偏心量の検定に影響するため別途、検討が必要となります。ウェブ貫通孔径=OSリング内径でご使用になりたい場合は、お問い合わせください。
岡部株式会社 技術開発部 TEL:03-3624-6201
SSタイプは貫通孔部分の補強効果が小さいため、孔径比(貫通孔径/梁せい)が大きくなるにつれ、大きな曲げモーメントやせん断力が作用すると剛性・耐力が低下します。よって、SSタイプは大梁には適用できません。
梁幅が小さく梁せいが大きなH形鋼は捻れやすく、部材種別がFA・FBの場合でも変形性能の低下が懸念されます。そこで、大梁として梁幅/梁せい比が1/4未満となる場合は原則として適用できません。
ただし、横座屈を生じないように横補剛材を設け、かつ、当該梁部材が架構の崩壊メカニズム時に弾性状態に留まることが明らかな場合は、この制限の適用は受けません。部材種別がFC・FDの場合は、Q&A28記載のように塑性化しない部分にしか適用できないので、梁幅/梁せい比の規定はありません。
構造実験に依る数値です。BH-600×200×6×12(SN400B)、貫通孔φ400、OSリング400Sで実験を行い、構造性能を確認しています。部材種別がFDの場合は、局部座屈の影響を考慮し、幅厚比の規定を超える部分は無効とみなして耐力を算定します。
SSタイプは貫通孔部分の補強効果が小さいため、スパンが短く、大きなせん断力が作用する梁は剛性が低下します。孔径比(貫通孔径/梁せい)が大きくなるとその傾向は大きくなります。よって、SSタイプは孔径比に応じた適用スパン比を規定しています。
構造実験およびFEM解析により構造性能(初期剛性・耐力・塑性変形能力)を確認していますが、せん断力が卓越すると構造性能が低下するため適用スパン比【Sタイプ片面補強、Sタイプ両面補強、Lタイプ片面補強は梁の内法スパン/梁せい(L0/D)が6.0以上、Lタイプ両面補強は梁の内法スパン/梁せい(L0/D)が4.0以上】を設けています。SSタイプは軸力が作用し、かつ、塑性化が予想される領域に貫通孔を設ける場合は適用できません。
SRC構構造梁の貫通孔補強工法として別途評定を取得しています。作用応力が耐力に包含されることを確認するなど一定条件を満足すれば、SRC構造梁せいの1/3まで近接することが可能です。詳細は鉄骨鉄筋コンクリート構造梁貫通孔補強工法「OSハリーZ」のウェブサイトをご参照願います。
【施 工 編】
各種実験により、OSリングは製品記号毎に必要すみ肉溶接サイズ(S)を規定しています。ローリング鍛造仕様は上面の刻印に、鋼管切断仕様は内面のシールに必要すみ肉溶接サイズが記載されています。必ず必要すみ肉溶接サイズS以上としてください。
ローリング鍛造仕様は上面に刻印及びセンターラインを記載しています。刻印は「製品記号」・「ロット番号」・「必要すみ肉溶接サイズ」が記してあります。材料認定に基づき機械試験(引張試験など)を実施しています。試験結果はロット番号で管理されており、検査証明書を発行致します。また、センターラインは位置合わせの目安としてご使用ください。
OSリングは防錆処理のため、全面に防錆剤【タセトシルバー※1 銀灰色:(株)タセト製】を塗布しています。タセトシルバーは、溶接の際、塗膜除去の必要はありません※2 が、溶接環境(温度等)や溶接条件(電流・電圧等)により溶接欠陥(ピット等)が発生する恐れがあります。溶接欠陥が発生した場合は「日本建築学会:鉄骨工事技術指針・工場製作編」に準じ適切な処置を施してください。
※1 タセトシルバーは(株)神戸製鋼所の登録商標です。
※2 タセトシルバー製品カタログを参照願います。
前もってOSリングの溶接箇所(側面および下面のメッシュ部)のタセトシルバー(OSリング溶接施工マニュアル図10参照)を除去する場合は、下記の例を参考に除去願います。
●ブラスト処理。
●ガスバーナー(酸素とアセチレン混合)等で塗膜を焼却後、ワイヤブラシ等による除去。
●グラインダー等による塗膜剥離。
●塗料剥がし剤(ペイントリムーバー等)による除去。
また、タセトシルバーは、そのまま一般さび止め塗装などの上塗りが可能ですので、溶接をしない箇所は剥がす必要はありません。
OSリングの外周を全周すみ肉溶接するだけなので在来のプレート補強と比べ、溶接量を著しく低減できるため、溶接による熱歪みの影響は小さいと考えますが、熱歪みが発生した場合は必要に応じて適切な矯正を行ってください。特にウェブ片側に連続して溶接する際はご注意ください。